概要
好きな問題です。楽しかったです。
解説で書かれていた方法とは違っていたので、書きます。私は結構難しい問題だと思いました。解けたので、書きます。
解法
小数部分が $10^{-n}$ にある程度近いような小数 $x_n$ を適当な方法で作ります。以下のようにしました。
$$\begin{align}x_1 &= \sqrt{26} &&= 5.0990195135927845,\\ x_2 &= \sqrt{59}+\sqrt{152} &&= 20.00997375380656,\\ x_3 &= \sqrt{29}+\sqrt{58} &&= 13.000937912998413,\\ x_4 &= \sqrt{201}+\sqrt{283} &&= 31.00005072001855,\\ x_5 &= \sqrt{457}+\sqrt{763} &&= 49.000012960298214,\\ x_6 &= \sqrt{79}+\sqrt{478}+\sqrt{495} &&= 53.00000098767802,\\ x_7 &= \sqrt{385}+\sqrt{444}+\sqrt{454} &&= 62.00000012871658,\\ x_8 &= \sqrt{200}+\sqrt{77}+\sqrt{130}+\sqrt{59} &&= 42.00000000998306,\\ x_9 &= \sqrt{454}+\sqrt{21}+\sqrt{212}+\sqrt{308} &&= 58.00000000096364,\\ x_{10} &= \sqrt{83}+\sqrt{71}+\sqrt{131}+\sqrt{123}+\sqrt{59}+\sqrt{68} &&= 56.0000000000936.\end{align}$$
数列の構成
実数 $x$ の小数部分を、$\{x\}$ と書くことにします。
実数 $P$ が与えられたとします。$n_1 = \Bigl\lfloor\frac{\{P\}}{\{x_1\}}\Bigr\rfloor$ とすると、$P_1 = P – n_1x_1$ に対して $\{P_1\} < \{x_1\}$ が成り立ちます。$n_2 = \Bigl\lfloor\frac{\{P_1\}}{\{x_2\}}\Bigr\rfloor$ とすると、$P_2 = P_1 – n_2x_2$ に対して $\{P_2\} < \{x_2\}$ が成り立ちます。
以下、同様にして、$\{P – \sum n_ix_i\} < x_{10} < 10^{-10}$ となる $\{n_i\}$ をとることができます。
$n_i x_i$ は、ルートの和で書けることに注意しましょう。例えば $n_2 x_2 = \sqrt{59n_2^2}+\sqrt{152n_2^2}$ となります。これらを合わせると、$29$ 個のルートの和を $P$ から引くことで、$P$ の小数部分を $10^{-10}$ 未満にできました。
$n_i < \frac{\{x_{i-1}\}}{\{x_i\}}$ で、$x_i$ はおおよそ $10$ 倍の等比数列にしてあるので、だいたい $n_i < 10$ です。$x_i$ は上を見ての通り、$50$ 前後ですから、$\sum n_i x_i$ はだいたい $5000$ 以下にはおさまります(ちゃんと計算していないです)。したがって、$29$ 個のルートを引いた結果として、小数部分がとても小さな正の実数が残ります。最後にこれを非負整数(これも非負整数のルート)で近似すれば完成です。
$x_i$ の作り方
適当に探索しましょう。「$\sqrt{1},\ldots, \sqrt{500}$ 等で $3$ つの和を全探索する」 みたいなことをやります。$500^3$ 個の数が作られるので、誤差 $500^{-3}$ くらいの数が見つかることを期待します。$x_7$ まではこうやりました。さらに半分全列挙のテクニックを使って、$4$ つ組と $6$ つ組も探すと、$x_8, x_9, x_{10}$ も作れました。
コメント
$x_i$ の公比の目安 「$10$ 倍」は適当な値です。「$100$ 倍」くらいにすると、数列長の制約は簡単になる一方で $8000$ 以下におさめにくくなるというトレードオフがあります。
$x_4$なんかを見ると分かるように、そんなに $10^{-n}$ にきちんと近い必要もないので、パラメータの取り方はとてもたくさんありそうです。ちょうど $30$ 項になったのは偶然でびっくりしました。使うパターンの工夫でまだ減らせると思います。
そもそも $x_2, x_8, x_{10}$ にたまたま $3$ 回現れた $\sqrt{59}$ の寄与をまとめるだけで、$28$ 項が実現できます。このように異なる $x_i$ に同じルートが使われているとオトクです。ルートの中に使う数 $r_i$ を決め打って、$x_k = \sum n_i\sqrt{r_i}$ という形で小数部分を調整すると、さらに項数の少ない構成ができるような気がします。